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病院長ブログ

2023.06.04

執筆論文解説26 「血液がサラサラになる薬」を服用中の症例に対する手術とその管理

 本論文は投稿論文です。

 抗血栓剤には大きく二種類あります。一つは抗血小板剤、もう一つは抗凝固剤です。動脈系血栓には抗血小板剤、静脈系血栓には抗凝固剤が使用されます。私が医師になった頃は少なかったのですが昨今は抗血栓剤を服用されている方がとても多くなりました。例えば脳梗塞後、心筋梗塞での冠動脈へのステント留置術後、不整脈の一つである心房細動など各学会がガイドラインを作成し内科医師がそれを元に予防投薬されています。このような患者さんが肛門出血などの訴えで受診されることが多くなったのです。

 万が一、手術ともなれば薬剤の休薬が必要です。その理由は多くの方は創部出血を気にかけての休薬ととらわれがちですが肛門手術の麻酔で頻用される脊椎麻酔施行時の血腫形成予防です。もし血腫が穿刺部位である硬膜やクモ膜周囲に形成されますと神経を圧迫し神経麻痺から下肢などの運動障害が起こってしまいます。休薬期間も薬剤によって1~30日と異なり煩雑です。ただし、休薬による血栓形成のリスクも忘れてはなりませんし、もし、休薬ができない場合にはヘパリン代替を行わなければなりません。ヘパリン代替が必要な場合には入院期間が長くなります。

 対象は26例(女性10例)で年齢中央値71.5歳、ヘパリン代替療法は9例に行いました。25例は脊椎麻酔で手術を行いました。術後止血術を要する創部出血は2例(8%)でした。幸い基礎疾患の悪化はありませんでした。

もちろん局所麻酔での手術なら休薬なしで施行可能ですが手術法は限定されます。